利益が「滝」のように流れる。損益計算書(PL)の構造を図解
岩手県で中小企業診断士として創業・経営支援に携わっております。
Kuraコンサルティングの松田です。
「損益計算書って、なんで利益が5種類もあるの?」
初めてPLを見た方のほとんどが、こう感じます。
売上総利益、営業利益、経常利益……
これだけ利益の種類があるのには、ちゃんと理由があります。
ある「イメージ」を一つ持つだけで、損益計算書(PL)の見え方が一気に変わります。それが「儲けの滝」です。
前回は、会計の「3つのルール」として発生主義・実現主義・費用収益対応の原則を見てきました。▶ 前回のコラム
今回はそのルールに基づいて作られる損益計算書(PL)の構造そのものを読み解いていきます。
損益計算書(PL)の構造は「滝」で理解する。
PLは、一番上の「売上高」という大きな水源から、費用を差し引きながら下へ流れていく「滝」のようなイメージで捉えると理解しやすくなります。
途中にある岩が「費用」です。水(売上)が岩に当たるたびに、水量(利益)は少しずつ減っていく。最終的に滝壺に残った水が「当期純利益(最終利益)」 です。
重要なのは、水が減るポイントは一度ではないということです。

「売上から費用を引けば利益」という単純な式ではなく、PLでは費用を性質ごとに分けて、段階的に差し引いていきます。
なぜ段階を踏むのか。それは、「どの費用がどれだけ利益を削ったか」を見えやすくするためです。粗利の段階で削られているのか、それとも販管費の段階なのか、あるいは借入利息が重いのか。問題の場所が違えば、改善策もまったく変わってきます。
5段階の利益を、滝の流れで読む
では、滝の流れに沿って、5段階の利益を順番に見ていきましょう。
① 売上高
事業で得た収入の総額です。商品を販売した金額、サービスを提供した対価。
すべてがここに集まります。滝の「水源」にあたる部分です。
注意点が一つあります。売上高はあくまで「売上として計上された金額」であり、現金が入金された金額とは必ずしも一致しません。
売上は現金の入金タイミングとズレることがあります(詳しくは▶前回のコラムで解説しています ) 。
請求書を発行した時点で売上に計上されるため、実際の入金はまだ先、というケースも珍しくありません。
② 売上総利益(粗利)
売上高 − 売上原価
売上原価とは、商品を仕入れた費用や、サービスを提供するために直接かかった費用です。売上総利益は「粗利(あらり)」とも呼ばれ、
事業の根本的な稼ぐ力を示します。
粗利率(売上総利益 ÷ 売上高)は業種によって大きく異なります。
目安として、飲食業は60〜70%程度、小売業は20〜40%程度とされていますが、業態や商品構成によって幅があります。
事業計画を立てる際は、自分の業種・業態に近い企業の数字を参考にすることをおすすめします。
業種別の粗利率を調べるには、中小企業庁が毎年実施している中小企業実態基本調査で、業種ごとの売上高や売上総利益(粗利)の平均値を確認できます。
粗利率が低い場合、その後どれだけ費用を削っても限界があります。利益構造の根本は、この段階で決まっています。

③ 営業利益
売上総利益 − 販売費及び一般管理費(販管費)
販管費とは、家賃・人件費・広告費・水道光熱費など、事業を運営するためにかかる費用の総称です。
粗利からこれを差し引いた残りが営業利益です。
営業利益は「本業でどれだけ儲けたか」を示す指標です。
この数字がプラスであれば、少なくとも本業の事業活動は成り立っているといえます。
逆に営業利益が赤字であれば、本業そのものが費用を賄えていないことを意味します。

④ 経常利益
営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用
営業外とは、本業以外の収支です。銀行借入に対する支払利息や、預金の受取利息などがここに入ります。
創業期の事業者にとって、営業外費用の大半を占めるのは支払利息です。
借入額が大きければ、営業利益が出ていても経常利益がその分削られます。
「本業では稼げているのに、借入の利息で利益が消える」という状況は、経常利益の段階を見ることで初めて見えてきます。

⑤ 税引前当期純利益
経常利益 + 特別利益 − 特別損失
特別利益・特別損失とは、固定資産の売却益や災害損失など、毎期は発生しない一時的な損益です。
これを加減した後が、税金を払う前の最終的な利益になります。
ここで一つ補足です。「当期純利益」という言葉は、この税引前当期純利益からさらに法人税等を差し引いた後の金額を指します。
PLの最終行に記載される数字がこれです。

PLを読めると、経営の悩みが「問い」に変わる
損益計算書の5段階を理解すると、「利益が出ない」という漠然とした悩みが、次の3つの具体的な問いに変わります。
粗利率は適正か(売上原価の段階で削られすぎていないか)
販管費は重すぎないか(家賃・人件費などの固定費が粗利を圧迫していないか)
借入利息が経常利益を削っていないか(本業では稼げているのに利息で消えていないか)
問題の場所が特定できれば、改善策も明確になります。
✅ 粗利率が低いなら仕入れや価格設定の見直しが先です。
✅ 販管費が重いなら固定費の適正化が優先です。
✅ 借入利息が大きいなら返済計画の見直しが必要です。
「なんとなく赤字」では打てなかった手が、問いが具体的になることで初めて打てるようになります。
損益計算書は、決算のときだけ眺める書類ではありません。
月次で数字を追いながら「どの段階で利益が削られているか」を確認することで、経営の問題を早期に発見できるツールになります。
創業計画を作る段階から、この視点でPLに向き合う習慣をつけておくことが、事業が動き出してからの判断力につながります。
まとめ
損益計算書は「難しい財務書類」ではなく、経営の問題がどこで起きているかを教えてくれます。
5段階の流れを頭に入れたうえで、月次で数字を追う習慣をつけることが、創業後の経営を安定させる第一歩になります。
「自分のPLを作ってみたけど、この数字で合っているか自信がない」という方は、一度一緒に確認しましょう。
創業支援相談・初回相談は無料で承っております。
次回は、融資担当者が損益計算書のどこを見ているかを、実務の視点から解説します。
Kuraコンサルティング 松田
