会計の3大ルール【発生主義・実現主義・費用収益対応の原則】
「会計って、なんでこんなにルールが多いんだろう」
そう感じたことはありませんか。
でも実は、会計のルールはすべて一つの目的のために存在しています。
それは、「正しい期間の、正しい利益を計算する」こと。
利益とは、売上から費用を引いたものです。
正しい利益を計算するには、
「売上をいつ計上するか」と「費用をいつ計上するか」
この2つを正確に決めなければなりません。
今回紹介する3つのルールは、まさにそのためにあります。
売上の計上タイミングを決めるのが 「実現主義」
費用の計上タイミングを決めるのが 「発生主義」
その両者を同じ期間に揃えるのが 「費用収益対応の原則」
順番に解説します。
ルール① 実現主義
「もらえることが確実になったとき」に計上する
収益は、「もらえることが確実になった時点」で計上するルールです。
たとえば、こんな状況を考えてみてください。
「来月、大口の契約が取れそうだ!」
「先方の担当者は前向きで、今月中に決まるかも」
この状況ではまだ売上には計上できません。
実際に商品を渡した、サービスを提供した、という段階で初めて「売上」として認識されます。
これを「実現主義」と言います。
なぜこのルールが必要なのでしょうか。
もし「見込みで計上してよい」となると、
財務諸表が「希望的観測」だらけになってしまいます。
銀行への提出資料や、投資家への説明資料の信頼性が損なわれるのです。
実現主義があるから、財務諸表は「まだ取れていない売上」を除いた、確かな数字で作られます。
※ 補足:収益認識基準について
2021年4月から、上場企業など一定規模以上の会社には「収益認識基準」という、より精緻なルールが強制適用されています。実現主義をさらに発展させ、「①契約の識別→②履行義務の識別→③取引価格の算定→④配分→⑤収益の認識」という5つのステップで収益を計上する考え方です。ただし、中小企業への適用は任意とされています。創業期のうちは、まずここで紹介した実現主義の考え方をしっかり押さえておけば十分です。
ルール② 発生主義
「費用」はいつ計上するか
費用は、現金が動いたタイミングではなく、取引が発生したタイミングで計上します。
これを「発生主義」と言います。
売上と違い、費用については「確実に発生した」と判断できれば、現金の支払いを待たずに記録します。
具体例で考えてみましょう。
12月にサービスを提供しました。代金の入金は翌年1月です。
▶ 発生主義:12月の売上として記録(現金はまだ来ていなくても)
▶ 現金主義:1月の売上として記録(現金が入ったタイミングで)
発生主義のほうが、12月の事業の実態を正確に反映できます。
現金主義だと、売上の計上月がズレて、実態と異なる成績表になってしまうのです。
たとえば、介護事業でよくあるのが「介護報酬の入金タイミング」の問題です。
サービスを提供するのは毎月ですが、国保連からの入金は約2か月後。
現金主義で記録していると、「先月の売上がゼロ」になってしまう。
発生主義なら「サービスを提供した月」に売上を計上するので、実態に即した数字になります。

ルール③ 費用収益対応の原則
「売上」と「費用」を同じ期間に揃える
実現主義で売上の計上時点が決まり、発生主義で費用の計上時点が決まりました。しかし、それだけではまだ不十分です。
ある売上を得るために使った費用は、その売上と同じ期間に費用として計上します。
これが「費用収益対応の原則」です。
リンゴ販売の例で考えてみましょう。
5月に仕入れたリンゴを、5月に販売した。
このとき、5月の売上に対応させるのは「5月に仕入れたリンゴの原価」だけです。4月に仕入れた別の商品の原価を、5月の費用に混ぜてはいけません。
売上 | 対応する費用 | |
✅ 正しい | 5月の売上 | 5月仕入れのリンゴの原価 |
❌ 誤り | 5月の売上 | 4月仕入れの別商品の原価 |
これが守られないと、「どの時期にどれだけ儲かったか」が正確に計算できなくなります。
介護事業で言えば、「4月に購入した消耗品の費用を、なんとなく5月の経費として記録する」ようなことが起きると、月次の損益がゆがんでしまいます。
費用はできる限り「その売上を生み出した期間」に紐づけて計上することが大切です。

3つのルールは、すべて「正しい利益計算」のため
まとめると、3つのルールはすべて同じ目的のために存在しています。それは、「正しい期間の、正しい利益」を計算すること。
実現主義 | 「売上」の計上タイミングを決める |
発生主義 | 「費用」の計上タイミングを決める |
費用収益対応の原則 | ①と②を同じ期間に揃える |
この3つがひとつながりで機能することで、
「この期間に、いくら稼いで、いくら使ったか」が正確に計算できます。
財務諸表が「実態を映す鏡」になるのは、この仕組みがあるからです。
創業計画の数字を作るとき、この流れを頭に入れておくだけで、思考の質が変わります。
「この売上は、いつ計上されるんだろう?」 | → 実現主義で考える |
「この費用は、どの期間に乗ってくるんだろう?」 | → 発生主義で考える |
「この売上とこの費用は、ちゃんと対応しているか?」 | → 費用収益対応で確認する |
こういう問いが自然に出てくるようになると、計画書の数字に根拠と説得力が生まれます。
銀行の融資担当者も、「この人はちゃんとわかって作っている」と感じてくれるはずです。
まとめ
会計の3大ルールは、決して「難しいルールを覚えるための勉強」ではありません。「どの月に、いくら稼いで、いくら使ったか」を正確に把握するための、ごく自然な考え方です。
これを意識するだけで、月次の損益を見るときの解像度がぐっと上がります。
<ポイントまとめ>
実現主義:売上は「確実にもらえると確定した時点」で計上する
発生主義:費用は「取引が発生した時点」で計上する(現金の動きではなく)
費用収益対応の原則:上の2つで決めた売上と費用を、同じ期間に対応させる
3つはバラバラではなく「ひとつながりの仕組み」として機能する
この流れを知ると、創業計画の数字に根拠と説得力が生まれる
銀行の融資担当者は、この3つのルールに基づいて計画書を読んでいます。
逆に言えば、ルールを理解して作られた計画書は、
それだけで「数字をわかっている人」という信頼につながります。
まずは直近1か月の売上と費用を振り返り、「これはいつ発生した取引か」を意識してみてください。
会計への見方が変わるはずです。
「自分の計画書の数字、これで合っているか不安」という方は、お気軽にご相談ください。
Kuraコンサルティング 松田
