集客に悩む個室サロンの相談が、法人研修につながった話|ドメイン「誰に・何を・どのように」を問い直す
岩手県で中小企業診断士として創業支援・経営コンサルティングを行っております。Kuraコンサルティングの松田です。私はもう一つ、岩手県内のある社会福祉法人で理事・事務局長を務めており、女性職員が多く働く現場の運営にも日々携わっています。
創業相談の場では、「集客がうまくいきません」という言葉から会話が始まることがよくあります。
ですが、その言葉をそのまま受け取って解決策を探すだけでは、本当の課題にたどり着けないことがあります。
今回は、個室サロンを営む箱石さんとのやりとりから、事業の「誰に・何を・どのように」を問い直し、結果として思わぬ広がりにつながった出来事をお伝えします。
最初のご相談は「個室サロンの集客」でした
箱石さんは、女性のホルモンバランスに着目したケアを提供する個室サロン「coco-hana」を開業されていました。
提供する施術そのものは質の高いものでしたが、開業から数ヶ月、店舗で待っているだけでは思うように集客が伸びないという悩みを抱えていました。
「産婦人科などにチラシを置かせてもらってはどうか」というアドバイスも受けていたそうです。
しかし、営業のために外を歩き回ることに強い苦手意識があり、なかなか一歩を踏み出せずにいました。
ここまでの内容だけを聞けば、「集客手法をどう改善するか」という相談に見えます。実際、創業相談がこのフェーズで終わってしまうケースも少なくありません。
ですが、箱石さんとの対話を続けるうちに、集客手法の話だけでは片付けられない背景があることが見えてきました。
話を聞くうちに見えてきた「本当にやりたいこと」
「なぜこの事業を始めようと思われたのですか?」
箱石さんから返ってきたのは、単なる開業動機ではありませんでした。
ご自身が過去に病を経験された当事者であり、病によって仕事ができなくなる女性のつらさを、身をもって知っているということ。
だからこそ、「女性が活躍できる社会を作りたい、その障害を取り除きたい」という強い思いを持って開業されたということでした。
これは、集客の技術で解決できる話ではありません。
箱石さんが本当に取り組みたかったのは、目の前のお客様一人ひとりへの施術にとどまらず、女性の不調という社会的な課題そのものへのアプローチだったのです。
ドメインを再設計する。「誰に」は変えず、「何を」「どのように」を変える
経営学には「ドメイン(事業領域)」という考え方があります。
事業を「誰に・何を・どのように」の3つの軸で定義するという視点です。
この3つのうち、どこを変えるかによって、事業の広がり方はまったく違うものになります。
箱石さんの場合、「誰に」つまり女性の不調に悩む方々を支えたい、という軸は変える必要がありませんでした。
問題は「何を」と「どのように」の部分にありました。
何を:個室での施術という「その場限りのケア」から、ホルモンバランスの知識と「セルフケア・セルフコントロール」の手法へ
どのように:店舗で「待つ」スタイルから、ご自身が講師として現場に出向く「研修」というスタイルへ
「施術だけでは、その時は良くても通い続けなければならない。でも、自分たちで知識を持ち、セルフケアができるようになれば、本当の意味で長く活躍し続けられるはずです」
箱石さんがそう語られたとき、この事業の本質は「マッサージの提供」ではなく「知識の提供」にあるのだと、私自身も腑に落ちました。
1対1の施術では、どれだけ頑張っても一日に対応できる人数には限りがあります。
しかし研修という形であれば、一度に何十人もの女性に知識を届けることができます。ターゲットを変えずに、提供する価値と届け方を変える。これが、箱石さんの事業を大きく前進させる転換点になりました。
この話は、自分が理事を務める法人にも必要だと感じた
箱石さんとの対話を重ねる中で、ふと自分が理事を務める法人の現場を思い出しました。
職員の体調やコンディションの波について、「なんとなく調子が悪そうだ」という感覚的な理解はあっても、それがホルモンバランスの変化という背景に基づくものだと、組織としてきちんと理解できていたかというと、正直に言えば心もとないところがありました。
「女性は1ヶ月のうちで、ホルモンの影響によって心身の状態が大きく変化することがあります」箱石さんからそう伺ったとき、これは個人の性格や気分の問題ではなく、組織のマネジメント側が前提として知っておくべき情報なのではないか、と感じました。
女性が多く働く現場において、こうした波を組織としてどう理解し、支えていくか。自分自身、この視点をどこまで持てていたか、改めて考えさせられました。
そう考え、法人として、箱石さんに研修をお願いすることにしました。
実際のセミナーで伝えられたこと

令和8年8月17日岩手日報
研修では、月経周期や更年期がもたらす心身の変化についての基礎知識から始まり、参加した職員が自分自身の状態を客観的に把握するための視点、そして日常でできるセルフケアの方法までを、実践的に扱っていただきました。
研修後、現場では、自分の不調を過度に責めずに受け止められるようになった様子や、管理職側が部下の状態を気分の問題として片付けずに向き合えるようになった様子がうかがえました。
現場の雰囲気にも、少しずつ変化が積み重なっていったように感じています。
職員にとっては、自分の状態を客観視しセルフケアを行う安心感につながり、法人にとっては、体調面での離職リスクを減らし、安定した組織運営の一助になりました。そして箱石さんにとっても、営業への苦手意識という弱みを乗り越え、ご自身の専門知識をより多くの方に届けられたという手応えにつながったはずです。
この取り組みは、関わる全員にとって意味のあるものでした。
まとめ
一つの創業相談が、集客手法の相談で終わっていたら、この広がりは生まれなかったと思います。
事業者本人の思いを丁寧に聞き、「誰に・何を・どのように」というドメインの視点で事業を見直したことで、箱石さんの事業は個人向けの施術から、組織に届く研修という形へと姿を変えました。
そしてその過程は、私自身が関わる組織の課題に気づくきっかけにもなりました。
創業相談で語られる「困りごと」は、必ずしもそのまま解決すべき課題とは限りません。その奥にある思いを聞くことから、事業の本当の可能性が見えてくることがあります。
「自分の事業を、どう広げていけばいいか分からない」
「集客の悩みの奥に、本当はやりたいことがある気がする」という方は、
お気軽にご相談ください。初回相談は無料で承っております。
